「――突然ですが、悲しいお知らせがあります。」

久々の兄弟集合を喜び、 酒場を貸しきって騒いでいた矢先、
いきなり入って来た、スーツにシルクハットの”いかにも紳士風”な男は、
俺達に向かってそんなことを言い始めた。

 「今、 あなた方の”ボス”が殺されました。」

俺達は少し静かになった後、鼻で笑い、
「本当か?」と、静かに銃を向け、尋ねた。

「ええ、本当ですとも。」

その言葉と同時に、兄弟たち全員の携帯が鳴り響いた。
どれも”親父”の死を伝える部下からの電話だった。
 
「どういうことだ」「お前がやったのか」
激昂するもの、困惑するもの、なおも冷静なもの、
それぞれ反応は違ったが、皆同じく撃鉄をカチリと下ろし、再度尋ねた。

「ボスは、亡くなられることを予期しておられました。
 明確な時刻と場所まで知った上で、なお、死地におもむかれたのです
 ――全ては”家族”を守るため。あの方最後の”交渉”でございました。」

以前に俺は親父から、大きなヤマが来ていると聞かされていたが、
まさか、親父自身の命を使ってまでの、ヤマだったとは。

「幹部であり、最愛の家族であるあなた方に、ボスから遺言があります。
 ”俺の座っている椅子は、一つ、お前らでわけ合え”と。」

――いずれはその日が来る。
そう思っていたが、どうにも、今日がその日らしい。

”俺達が悪党である限り、
 平等で平和的な分けあいなど存在しない。
  あるのは勝者への配当のみ”

親父がいつも俺達にいっていた言葉だ。

どうやら他の兄弟たちも、解ったようで、
親父が死んだというのに、どこか笑っているように見える。

面倒な、なかよしこよしの家族劇も、今日で終わりだ。

死んだ親父に”乾杯”を告げて、
俺達は酒場を立ち去った。


 「さてさて、始まりましたね。兄弟争い。
 順調に、問題なく、事は運んでいますよ。ボス……。」